『Free Solo』

一昨夜、BS1で『Free Solo』という映画が放映された。最近映画から遠ざかっていたので情報を何一つ持っていなかったが、友人から過日連絡を戴き、満を持してチャンネルを合わせた。とにかく、ヨセミテのエル・キャピタンをフリーソロで登るというのだから、大変なことだ。ワクワクする気持ちを抑えて、TVにかじりついた。かつてはウエリ・シュテックの独壇場の時代があり、ヨーロッパアルプスの困難なルートをいとも簡単に踏破して、アイガー北壁を2時間47分で登った時にはとても驚いた。YouTubeにそのときの様子を見ることが出来る。

ところで、このエル・キャピタンのフリーソロでの登攀は、アレックス・オノルドという人物だった。この映画では、生い立ちから今の生活にもカメラが入っていて、その人となりにも深く切りこんでいる。高さ900mの絶壁をフリーソロで登る、ということが一体どういうことなのか、よく理解できない。恐らく恐怖という概念がないか、恐怖を自分でコントロールできる能力を持っているのだろう。

1980年代、岩登りに少しはまったことがあった。といっても、北鎌とか北尾根とか北西稜らの一般ルートではない程度の岩登りで、比較にはならないがまさにフリーソロを何度もやった。それでも怖い場面を甦らせることはいまでも簡単にできる。近年では八ッ峰8峰で行き詰まり、懸垂で下るときパートナーが支点作りに手間取り、しばらく狭い岩棚でセルフビレイのまま待ったことがあったが、そのときの恐怖も懐かしい。しかし相手がエル・キャピタンとなれば、恐怖の度合いが半端ではない。そんないわば、極限のところでチョークバッグひとつで岩登りを何時間も行う、という精神状態が想像つかない。
Free Solo.jpg
映画の中での彼の言葉を読み解くと、ある意味で死んでもいいと思っているのだ。そりゃあそうだろう、いくら自信に満ちているとしても、ほんのちょっとのミスも許されないとすれば、死を覚悟していなければトライすることも出来ないだろう。けれども、そうした覚悟を凌ぐクライミング能力を身に着けているのだろう。登攀中、墜落とか死という恐怖は彼にはなかったに違いない。にわかに信じ難い。

他言無用で岩に向かうが、撮影クルーだけが見守る。撮影していることがまともにアレックスに分からないように配慮もする。ならば、撮影なんてしなくてもいいのでは、とも思う。撮影して、今回のようなドキュメンタリー映画化する、というのを前提とするなら、それは何か違うような気もする。しかし、クライマーとして生きて行くとすれば、こうした形で自分の活動を公開して生計を立てるしかないのかも知れない。人はみな仕事を持ち生計を立てる。クライマーなど、自分の好きなことをして、それもこのような特殊な行為を突き詰めて行く、となれば生計を立てる、というのは簡単ではなく、つまるところこのような形で収入を得るしかないのかも知れない。だとすれば、彼の仕事はクライマーとしての成功であり、そこに自己実現もあるのだろう。自分の才能に気が付いた幸せな彼である。数少ない自己実現を果たすことができた幸せな彼である。

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この記事へのコメント

  • 芝刈り爺さん

    いやはや、、。向き不向きはあるもので、この岩の写真、クラックに手を入れて登る姿、,.見ているだけで,,下半身、おしりあたりから、むずむずとゲジゲジ虫が這い上がってくるような恐怖感を感じてしまい、、ダメダメですね.岩も落ちそうなところも超苦手、あり得ない世界になってしまいました。別件ですが、最近読んだモンベル、辰野勇さんの本「モンベルの原点、山の美学」(平凡社、「のこす言葉」)の中で,辰野氏が高校国語の教科書で「白い蜘蛛」を読んで感動した話(時代が似ていて私もこのハラーの話を読んだけど,すげぇーよく行く!だけでしたが)彼は六甲のロックガーデンで見よう見まねで岩登りしたそうで、、。
    このYouTube。さらにすごい人がいるんですね,ノーザイル、落ちたら、、。やっぱりすごい,でも見るのも怖い私ですね。
    2020年06月17日 20:11
  • argo

    芝刈り爺さん、これは尋常ではありません。落ちてもいい、と思いつつ恐怖からは遠い
    ところで自分を見ている、それはたゆまぬトレーニングの上にあるもののようです。
    しかしそれだけではないですね。クライミングの才能も備わっていて、それに気づいて
    いる、ということもあるようです。いずれにせよ、到底考えられない世界です。
    2020年06月18日 12:01