赤薙山 南東尾根滑降

赤薙山へは通常、キスゲ平からの東尾根を登る。その時、中ノ沢を隔てて左手に見えている長大な尾根が南東尾根だ。東尾根を登りながら幾度となく南東尾根を観察し、実際に踏査もしたことがあるが、二ヶ所樹林がまばらで雪がつくと快適そうな緩斜面が続くところがあるので、これを滑走出来はしないかと思っていた。そんな中、この冬は早い時期から雪が降って、まずまずの積雪があるのでチャンスを見てトライしてみたいと考えた。
ただし問題点がある。南東尾根の滑走ということになると、まずは山頂に登り滑走に入るのだが、どこまで滑るか、ということだ。もし以前踏査した時のように下部の沢まで滑るとなると、これは難しい。ブッシュと急斜面が立ち塞がっているからだ。それに積雪量の問題だ。この辺りの積雪は大したものではなく、下部のブッシュが隠れるほどの積雪量は考えにくい。それに、たとえ下れたとしても、キスゲ平への登り返しのアルバイトが待っている。
ならば、下部平坦地1600m付近まで滑走したのち、登り返すか・・。いやその前に、本当に快適斜面があるのだろうか、と疑問も生まれていた。観察と踏査で快適斜面はありそうだ。しかし、行ってみないと分からないことも多い。
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今回は、これまで先送りして来たこの件に決着をつけたいと気合を入れて入山した。例によって、夜明け前から歩き出す。小丸山の大斜面は、前日の雪でリセットされまっさらな斜面だった。一本滑ってしまおうかと思ったが、南東尾根が今回の目的なので体力温存、グッとこらえて登って行く。何度目かのジグの途中で夜が明けた。新月前の肉眼で見える限界の細い月が出ていた。
小丸山からは今年のトレースがまだ生きていたので、それを追う。新雪が覆っていても、10cm程度ではトレースはわかるものだ。焼石金剛に出ると、いつもの三角バーンがリセットされて待っていた。薙の縁を歩いて行くとドロップしたくなるが、それも抑えて山頂に向かう。
樹林帯の段差の大きい登りが今年は軽く登れるので助かる。一旦樹林が切れて再び樹林に入るあたりから、若干アクロバティックな登りを迫られるが、山頂まで板を脱がずに登り切った。

夜明け前の東の空に、新月前の細い月が昇っていた。
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天空回廊に取り付く。
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新雪が乗って、リセットされた斜面を登る。
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振り返ると、日の出を待つかのように朝焼けが広がっていた。
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次第に夜が明けて行く・・。
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高原山にはまだ雪雲がかかっていた。
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小丸山を越え、東尾根をひたすら登る。ようやく焼石金剛に至り、見上げる赤薙山。
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目指す南東尾根、左下の白い台地まで滑れるだろうか。
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薙の縁に出る。
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超広角で光る海を撮影。
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雪が段差を埋めてくれている。
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登って来た東尾根を俯瞰する。
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樹林が切れて山頂が近づいて来た。まだ海が見えていた。
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最後の登りは板を履いているとかなり厳しい。
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いつもの山頂。積雪は決して多くない。鳥居が埋まるほど降ってみて欲しい。
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写真を撮ったらシールを剥いでいよいよ南東尾根に降りて行く。とはいうものの、この山頂部の樹林帯は結構ハード。雪の乗った枝が行く手を阻む。雪の地面を求めて落ちて行く。それでも何とか滑って頂上斜面の上に出る。
以前ここは何度も滑り、一度は転倒し板が外れて落下、手を組んで祈ると止まってくれた、という思い出のある素晴らしい斜面だ。今回は、これもパス。尾根伝いに進まねばならない。岩はある、木の根も出ている、しかも急斜面となると、とても楽しく滑るとは行かず、横滑り多用でとにかく山頂から二段下がった台地へ向かう。

山頂からは定番の男体・女峰。
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山頂のトラロープを跨いで南東尾根に取り付く。
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枝の上の雪を繋いで滑る。
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地面の雪の上も滑る。この辺りは雪が多く、無謀なことも可能だ。
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山頂直下は急斜面が続く。
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ちょっと傾斜が緩むと、樹林の中に突入。
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山頂を振り返る。
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東尾根の向こうに雲が取れた高原山が見えて来た。実はこの下に素晴らしい斜面が広がっている。
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痩せた尾根に密に樹林が立ち並び、それらを何とかかわしながら下って行く。ようやく密樹林を抜けて台地に出るが、風の通り道となっていて予想通りここには雪がつかず石が露出していた。しかしこの先には雪のついた痩せた斜面が続き、何とか緊張の滑りを楽しめた。右手の男体・女峰がいつもとは少し違った見え方をしていて、素晴らしい景観だ。さらに雪庇の出た稜線を滑って行くと、疎林の大斜面に出た。これはいい感じだ。
けれども滑りは僅かな時間でその先には、また次の藪が待っていた。行くしかないか・・、突入する。

痩せた尾根には結構密な樹林が立ち並ぶ。
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際どい滑りでもう一段下がった台地へ向かう。
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草付きの急斜面を滑るのは心臓に悪い。
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二段目の台地は風が強く、雪は飛ばされていた。また左手には雪庇が出ていた。
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振り返って、山頂からの南東尾根をよく観察する。
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ちょっと登ると台地状のピークから南東尾根ののびやかな稜線も見渡せた。
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果敢に急斜面に挑む。
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これくらいの尾根が続くのなら最高だ。
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ガンガン落ちて行く。快適、南東尾根滑降、何か動物の足跡が続いていた。
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心臓バクバク、ひと息ついて振り返る。
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更に滑降を続けて行くと、藪帯に捕まった。
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その先には、再び白い台地が待っている。しかし急斜面の藪を抜けるのは容易ではない。また細い枝がひっかかって、最悪。赤薙山の山頂では-10℃だったが、日差しは強くパウダーだった雪もややしっとりして来た。
同時にこの藪を抜けるパワーに、身体も汗ばんで来る。藪の先の白い台地が見え隠れしているが、この藪との格闘を続ける中で気持ちが萎えて来た。つまり、帰りに登り返すときにもこの藪を越えなければならない、という現実だ。

この藪の向こうに白い斜面が見えるが、この藪の往復は辛いだけだろう。
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残念ながら、この先に多少楽しめそうな斜面が見えたが、その後の下降或いは登り返しに相当のパワーを必要とすることが想定され、"労多くして益少なし" の現実を知ることになった。潔く、撤退を決め登り返すことにする。まずはこの藪を登り返すのだが、スキーでの登りはかなりしんどい。ただの斜面なら多少の傾斜など何でもないが、ブッシュつきとなると嫌になる。しかし意を決してルートを決めたのだから、頑張るしかない。
東尾根の薙の上にトラバースするためには、それよりも少し高いところまで登り返す必要がある。薙の手前の山襞には大きな岩の露出がある。この上に出るようにトラバースを上手く完結させるためには、少し上部からスタートすべきで、同じ高さではスキーの利点を生かせない。

登り返しを決め、再びシールを貼る。
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振り返ると、結構下まで滑降したことがわかる。
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朝方雲のかかっていた高原山もすっかり晴れて来ていた。
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きつい登り返しをひたすら頑張る。
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滑りではあっという間であるが、登り返しはキツイ。雪原の台地まで登り返して来て、ヤッケを脱いだ。ひと息入れて行く手の大展望を堪能する。この角度からの男体から女峰・赤薙山までのパノラマは見事だ。
買って来たホットレモンも冷たくなっていたが、雪を融かし込んで量を増やした。カルピスウォーターやこのホットレモンは、雪を入れて薄めてしまっても、味があまり変わらないのがいい。

丸い台地まで登り返して来た。
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赤薙山の姿が、見慣れたものと違って新鮮だ。
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台地上からは、1983峰の黒々とした姿が正面に見えた。威圧感のある風貌だ。
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さて登り返しの続きだ。ようやく山頂部より二段下った岩屑の痩せ尾根まで戻る。強い風で出来た雪庇に注意して通過、急斜面の痩せ尾根に取り付く。シール登高の限界という感じの登りに手を焼くが、東尾根を見据えて登って行く。この辺りからは東尾根はよく見えないのでその手前の山襞を見るのだが、この山襞には岩壁があって、これを目標にトラバースポイントを探る。
前述のように、この岩壁の高さよりも上に出ないと、トラバースをスムーズに済ませることができないので、ここが頑張りどころである。とはいっても登り返しは無駄のないことが一番であるから、トラバースのラインを考えながらじわりじわりと登って行く。そうするうちに、僅かな平坦地を見つけることができた。

砂礫の台地から山頂を見上げる。
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東尾根が見えた。
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左手には1983m峰越しに女峰山が雄大だ。
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この辺りの積雪は少なく、笹が露出しているところもあった。
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べったり雪がついているところは有難いが、この急斜面を登るのは手強い。
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尾根上の密林地帯、露岩もある。
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ようやくトラバースポイントを見つけた。
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シールを剥いで再び滑降モードになる。トラバース開始、ラインを想定して障害物を上手に回避して行く。山の斜面は決して平坦ではないので、木立や起伏を読みながら、急斜面に横線を入れて行く。斜面を一気に切るときは、雪崩に細心の注意を払う。シカではなさそうな動物が、絶妙のラインでこの急斜面に足跡を残していた。
大きな谷をふたつ横切り、やっとの思いで東尾根手前の山襞の岩壁上に出ると緊張から解き放たれた。

目指すは向こうに見える尾根の同じ目線のポイントだ。
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樹林斜面のトラバースはライン取りが難しい。
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かつて何度か滑っている山頂直下に広がる大斜面をトラバースして行く。
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いくつもの山襞を乗り越えて来た。東尾根の手前に乗り上げ、ホッとする。
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ここまでくれば、ロスの無い形で薙上部のドロップポイントに出ることができる。ツリーランを楽しみながら、薙上部へ滑り込むとそのまま中央部に出て行く。シーズン4回目の薙滑降。すると、滑り出して間もなくターンで切った斜面が、滑り出した。重くなった雪が足下をすくう。想定内の表層雪崩、脱出してすぐ隣にシュプールを刻む。傾斜が落ちて雪崩は立木帯の入り口で止まった。

雪の量が変わり、快適な雪の斜面になる。
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薙の上部・ドロップポイントが見えて来た。
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一気に薙に滑り込むと、ターンをした後ろでザザーッという音が聞こえた。雪崩れたな、と思った瞬間・・
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表層が切れて落ちて来た。足下をすくわれるが、流れを振り切り並んで一緒に滑る。
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積雪量が大したことはないので、全層でも埋まるようなことはない。気温が上がって、朝のパウダーも雪質は重くなっていた。南面のこの薙の雪は日差しを浴びて、どんどん融けてしまう。中央の凸部はすでに笹を露出させていた。
三度シールを貼って薙を登り返す。すると、薙の縁をシートラで歩いている人が見えた。ボードかな、とも思ったがスキーのようだ。赤薙山の上部でスキーヤーを見ることは殆どないので、珍しいなと思ったが、歩いて降りてくる姿に違和感を感じた。薙を脱して稜線の焼石金剛に出ると、そのスキーヤーに声を掛けられた。

雪崩と並んで滑降した跡を見ながら登り返し。
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ブッシュを抜けると薙の全貌が見える。
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焼石金剛へ登り返す。
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三度シールを剥いで、滑降モード。今回はこれで帰ろう。初めてという彼に赤薙山東尾根の北斜面を案内した。北面だけあって、まだパウダーが詰まっていて快適な斜面を楽しむことができた。途中で右手に少し移動、そのままツリーランを楽しむと丸山の鞍部に出た。小丸山はすぐだ。予想通り、小丸山の最後の大斜面は南側に少しノートラックバーンを残すのみとなっていて、シュプールが沢山ついていた。今年は雪もまずまずだし、コロナのせいでキスゲ平に出向く人が増えたらしく、小丸山の大斜面にはいつもシュプールがいっぱいだ。最後は軽く流してB点に帰着して終了した。

僭越ながら、東尾根北斜面を案内した。
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緩斜面が続くこの部分は赤薙山のひとつの側面だ。
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丸山鞍部。朝には新雪が乗って真っ白だったのに、丸山の雪はすっかり融けてしまっていた。
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小丸山に戻り、もう一度赤薙山を仰ぐ。
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小丸山展望台から大斜面を見下ろす。最後のお楽しみだ。
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小丸山からは南の端にノートラックバーンを見出し、シュプールを刻む。
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ギタギタの斜面、そして春のようになってしまった雪。でもそれなりに充実した一日。
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帰宅してライブカメラを見ると、自分の帰る姿が映っていた。
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この記事へのコメント

  • 芝刈り爺さん

    ひゃぁーー。よく下りましたね。歩くんだってつらい!しかも滑って,,しかも登り返し、,これは「地獄」です。凄い凄い、としか言い様がないですね。うーーん。
    2021年02月14日 08:40
  • argo

    芝刈り爺さん、こんにちは。
    山スキーはこんなもん、ではありませんが、物好きはこんなこともやってみるわけです。
    何が辛いか、って、そりゃあ登り返しですね。これが出来るだけ少ないように上り下り
    するのが、山スキーの醍醐味ですね。
    2021年02月14日 12:04
  • フライマン

    あの南東尾根を滑ったんですね!!
    私も、あの尾根を滑ったら気持ちいいだろうなと思っていました。
    三角バーンと比べると相当ロングに滑れるみたいですね。
    素晴らしいです。
    でも、登り返しが必要なので大変そう。
    2021年02月15日 17:44
  • argo

    フライマンさん、こんにちは。
    温めていた懸案ですが、結局あまり楽しめない尾根です。やはりブッシュが厳しく、
    下まで滑るのは利口ではないし、だからと言って登り返しをするのは、愚かしいですね。
    とても残念ですが、今年の倍くらいの降雪があったら、もう一度という気になるかも、
    です。
    2021年02月15日 18:37
  • contract24

    その節は、東尾根北斜面(赤薙)案内ありがとうございました。写真拝見しました!
    その日、お会いする前の写真やコメント、大変興味深かく見させて頂きました。
    2021年02月15日 23:44
  • argo

    contract24さん、こんにちは。
    過日は、有難うございました。南東尾根、見て戴いて恐縮です。こんな感じでした。
    日光方面では、なかなか山スキーの対象になる山はないですね。
    2021年02月16日 09:50
  • 芝刈り爺さん

    改めて,改訂版、、復旧したデータを元に書かれたものを見ましたが、、最初、朝焼けがきれい!次、凄いところを下る,,恐ろしや,草付き、,雪なし、雪庇、、。
    登り、これまた難行苦行!アイゼンほしい!という感じ、よく登りましたね。トラバース、,考えられない,恐ろしさ、しかもスキーで!後半、雪崩、,雪崩と一緒に滑るなんて、、007並み。なんかそういうシーンがあったような。まずはご無事で何より。わたしには近づくことが不可能な世界ですね!
    2021年02月20日 09:40
  • argo

    芝刈り爺さん、こんばんは。いつもいつも、コメント有難うございます。
    そうなんです、最初の方の写真が壊れてしまっていましたが、レスキューしてもらいました。
    ブログに加筆できたので、ホッとしています。新月前の細い月の写真を載せたかったので、
    助かりました。
    2021年02月20日 21:40